法人化するメリット・デメリット
個人事業者が新たに法人を設立して法人格を得ることを、一般に、「法人成り」といいます。
事業の法人化は取引の幅や範囲が広がるだけでなく、節税や社会的な信用といった、様々な面において多様なメリットがあります。一方で、設立の費用・時間、損金の算定、健康保険の負担等、様々なデメリットもあります。
ここでは、法人化とその後の会社にかかるメリット・デメリットについて紹介していきます。
■法人化のメリット
・社会的信用力の担保
法人は、個人事業者と比較して、一般に社会的信用が担保されていると評価されます。したがって、取引先との交渉が有利に進むだけでなく、取引内容の幅や金額の規模の拡大が期待されます。
・責任範囲の限定
一般に、会社が活動する範囲が拡大すると、それに伴い経営上のリスクは拡大していきます。個人事業の場合、事業破綻や倒産の際の未払い金や借入金、未納分の税金といった負債はすべて個人で無限に責任を負うことになります。
他方、法人(株式会社や合同会社)の場合は、出資額の範囲においてのみ、すなわち、有限に責任を負います。もっとも、個人保証による借入や、自身が連帯保証人になっている場合には、借入等の返済についての免責はありません。
・節税対策
会社利益に課税される税金には、法人税、法人住民税、法人事業税があります。これらを合わせると実効税率で34.62%になります。
他方、個人事業の場合、累進課税制度のもとで所得税が課税されます。この場合、個人の所得に応じて最低10%から最大40%で税率が変動します。
以上を踏まえると、年間の所得がおよそ500万円以上となる場合には、法人化した方が課税率が低くなり、節税になるといえます。
■デメリット
・会社設立時の費用
株式会社を設立する場合、設立までの総費用として最低でも約25万円が必要になります。設立手続きの代行を司法書士や行政書士等に依頼すれば、その報酬費用も必要です。
・会計や事務処理の負担増加
法人の場合、会計処理は会社法に準じて処理するため、税務申告や会計処理が複雑化します。また、社会保険や労働保険の手続や、会社組織に関する手続等、事務処理負担が増加します。
・交際費の経費算入
法人の場合、交際費のうち飲食代に限っては50%の費用を損金として算入できます。また、資本金1億円以下の法人の場合には、年間800万円までは損金として控除されます。
一方、個人事業主の場合は、交際費についての規定がないため、全額損金に算入できます。
・社会保険への加入
法人は、健康保険と厚生年金保険への加入が義務づけられます。その際、会社は保険料を半分負担しなければなりません。また保険料は、国民健康保険と国民年金に比べて保証が手厚い分高額になります。
神保町法務司法書士事務所では、東京都を中心に、一都三県、関東近郊の地域で、個人事業主から法人化、合同会社設立の費用、法人成りのタイミング、といった会社設立に関する相談を承っております。お悩みの際には当事務所までご相談下さい。