公正証書遺言の作成手順|準備しておく書類・証人・費用とは
公証人に作成してもらう「公正証書遺言」は、必要書類や証人を準備のうえ、遺言内容を考え、公証役場で手続きをしないといけません。
ここではその具体的な手順と準備すべきもの(費用を含む)について解説します。
公正証書遺言では公証人が作成する
「公正証書遺言」とは、公証人が遺言者から遺言内容の口述を受け、それを筆記して作成する遺言書のことです。
他には「自筆証書遺言」や「秘密証書遺言」があり、これらと比べて安全性の高い方式であると一般的にいわれています。
遺言書が無効になるリスクや改ざんなどのリスクが低く、その一方で作成の手間と費用が大きいという特徴も持ちます。
遺言内容は本人が考える
作成作業自体は公証人が行いますが、遺言者が口授した内容に基づき、遺言者の真意に沿って正確に文章としてまとめていくことになります。
そのため遺言内容は当然本人が考える必要があり、誰がどの財産を相続するのか、どのような相続割合とするのか、など公証人が決めることはありません。
公証人が遺言者の相談を受けて最低限必要な助言をすることはありますが、それでも特定の人物の利益となるような個別具体的アドバイスまではできません。
公正証書遺言作成の流れ
公正証書遺言を作成するまでの流れは、次の6つの手順で説明できます。
- 遺言内容を決める
- 資産を特定する資料を準備する
- 遺言書の下書きを作成する
- 証人になってくれる方に依頼する
- 公証役場に連絡する
- 作成予定日に公証人に作成してもらう
各過程で押さえておきたい事柄を紹介します。
手順①遺言内容を決める
まずは遺言内容を考えましょう。
相続人に対して相続割合を指定するほか、相続人以外の第三者に遺贈をすることもできます。
また、その方法について遺言執行者に委ねることも遺言書を使えばできます。
法に抵触しないことも意識する必要がありますし、「遺留分」と呼ばれる相続人に最低限留保される財産についても配慮をしておきたいところです。
そのため司法書士など遺言書に詳しい専門家からアドバイスを受けながら内容を考えていくようにしましょう。
手順②資産を特定する資料を準備する
遺言で言及した資産について、それぞれを特定する資料の準備をしておきましょう。
例えば不動産なら地番や家屋番号を知る必要がありますので、「登記簿謄本(登記事項証明書)」、預金なら銀行名や支店名、口座番号の情報が必要ですので「銀行通帳」を準備しておきます。
手順③遺言書の下書きを作成する
遺言書の原本は公証人が作成しますが、遺言の下書きまたはメモとなる文書を作っておきます。
作成の仕方に迷うこともあるかと思いますが、司法書士に相談しながら取り掛かれば問題ありません。
手順④証人になってくれる方に依頼する
証人が 2人以上いないと作成要件を満たせません。そのため証人になってくれる方を探し出して、依頼を済ませておきましょう。
※証人が確保できないときは公証役場に相談。証人となる人を斡旋してくれるケースもある。
なお、遺言に直接の利害関係を持つ推定相続人は証人になれませんし、 18歳未満の未成年者についても証人にはなれません。
手順⑤公証役場に連絡する
公証役場に連絡して、公正証書遺言を作成したい旨を伝え、作成予定日を設定します。
また、そのときに提出すべき書類についても確認しておくようにしましょう。
手順⑥作成予定日に公証人に作成してもらう
次に掲げるものを準備して、作成予定日に証人とともに公証役場に行きます。
- 遺言者本人の印鑑登録証明書と実印
- 推定相続人との続柄がわかる戸籍謄本(全部事項証明書)
- 推定相続人以外に遺贈をするときはその方の住民票
- 遺言の対象になっている資産を特定する資料
- 証人 2人の氏名・住所・生年月日・職業が記されたメモ
その後公証人に対してこれらの書類を提出し、遺言内容を口述。
公証人がその内容に従って作成をしてくれますので、その原本の記載内容をチェックのうえ、問題がなければ署名押印をします。
最後に、遺言書の正本と謄本を受け取るとともに費用を支払います。
作成にかかる費用
法律の専門家である公証人に作成をしてもらうため、公証人に対する手数料の支払いが必要です。
このときの手数料は、遺言の対象になった財産の価額に応じて算出されるルールになっています。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
200万円以下 | 7,000円 |
500万円以下 | 1.1万円 |
1,000万円以下 | 1.7万円 |
3,000万円以下 | 2.3万円 |
5,000万円以下 | 2.9万円 |
1億円以下 | 4.3万円 |
3億円以下 | 4.3万円に |
10億円以下 | 9.5万円に |
10億円超 | 24.9万円に |
出典: 日本公証人連合会HP
このとき見るのは「遺産の総額」ではなく、相続人や受遺者単位で受け取る財産に着目します。
つまり遺産の総額が 1億円でも上表にある 4.3万円になるとは限らず、妻と長男長女の相続分を指定したときはその割合で分割した後の金額で判断します。
例) 1億円を法定相続分によらず、妻 2,000万円、長男 3,000万円、長女 5,000万円で分割するよう指定したとする。
上表にあてはめると、公証人手数料は次のようになる。
- 妻・・・ 2.3万円
- 長男・・・ 2.3万円
- 長女・・・ 2.9万円
合計額は、 7.5万円
※遺産の総額が1億円以下の場合、この合計額に 1.1万円の遺言加算を行う。そのため、費用全体の額はこのとき 8.6万円となる。