相続登記とは?不動産を相続したときの手続きの基本について
相続登記とは、亡くなった方(「被相続人」と呼ばれる)から相続した不動産(土地や建物)の名義を、相続人の名義に変更する手続きのことです。
相続を原因とする所有権移転登記のことであり、遺産に不動産が含まれているときはこの手続きが義務となりますのでご注意ください。
相続登記の基本
不動産登記とは、法務局で管理されている登記簿に、不動産の所在地・面積・所有者の情報などを記録することをいいます。
この記録が必要になるシーンは多岐にわたり、たとえば新たに建物を建築した場合や、不動産を購入した場合、ローンを組むため抵当権を設定する場合などがあります。これらと並び、「相続で土地や建物を取得した場合」も挙げられます。
例1)親が生活に使っていた自宅を子どもが相続したケース
例2)賃貸物件を所有していた祖父が亡くなり、遺言書の記載に従い孫が遺贈を受けたケース
相続発生と同時に多くの遺産は相続人が承継できますが、不動産に関しては権利関係が登記制度により登録されていますので、第三者に対して「私が相続で所有権を引き継ぎました」という事実を示すための手続きが必要なのです。
要は不動産の所有権移転のことですが、相続を原因とするときはこれを「相続登記」と区別して呼ぶことが多いです。
相続登記が必要な理由
相続登記は、法律上しないといけない手続きです。
土地や建物を取得することになった相続人等には登記を行うべき法律上の義務が課され、これを怠った方に対する「 10万円以下の過料」という制裁の規定も設けられています。
すべての登記が法律上の義務とはされていないのですが、相続を契機とする登記を放置してしまうと所有者不明の土地が増えてしまい、土地の利活用や公共事業の妨げとなってしまいます。このような背景があったことから法改正が行われ、相続登記は義務となったのです。
そしてこの相続登記の義務は 3年以内に履行する必要がありますのでご注意ください。遺産分割が間に合わないとき用に「相続人申告登記」と呼ばれる簡易的な登記手続きも用意されていますので、不動産の取得で揉めているときはいったん相続人申告登記を進めておくと良いでしょう。
未登記で放置するリスク
登記の義務を別にしても登記申請をしておくべき理由はあります。
1つは「所有権を第三者に対抗するため」、もう1つは「今後の不動産取引を円滑に行うため」という理由です。
登記をしていないと、相続人以外の第三者が「私が本当の所有者だ」と表れたときに退けさせるのが難しくなってしまいます。
結果的に、親や配偶者などから受け継いだ土地・建物を失うことになるかもしれません。
売却をしたくても買い手がつかなかったり、不動産業者が取り扱ってくれなかったりもします。
また、時間が経過するとほかの相続人が亡くなってしまい、さらに相続人の範囲が広がってしまうおそれもあります。そうなるとさらに手続きが複雑化します。
相続登記の基本的な流れ
相続登記の手続きは、大まかに以下の流れに沿って進みます。
- 相続する不動産の確認(亡くなった方が所有していた不動産を特定する。ほかの財産についても網羅的に調査を進める)
- 分割方法を決めて取得者を確定させる
- 遺言書がある場合はその内容に従う
- 遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、誰がどの不動産を相続するかを決める
- 必要書類を集める(戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書など、相続登記に必要な書類を集める)
- 法務局への申請(不動産の所在地を管轄する法務局に申請書類を提出する)
添付書類や申請書の内容に不備があると修正作業が発生しますし、誤った情報で登記されてしまうと権利の主張が難しくなってしまいますので慎重に作業を進めましょう。
司法書士への依頼も検討
相続登記は自分で行うことも法的に問題はありませんが、一般的には登記の専門家にあたる司法書士が対応します。
特に以下のケースに該当するなら司法書士に依頼することをおすすめします。
- 相続人の中に行方不明者や疎遠な人がいる場合
- 相続人に未成年者や認知症の方がいる場合
- 戸籍収集の方法や読み方がわからない場合
- 遺産分割協議書の作成方法がわからない場合
- 登記申請書を作成したことがない場合
- その他手続きが複雑な場合
- 相続登記を長期間放置していた
- 相続人の数が多い
- 相続する不動産の数が多い
- 不動産が遠方にある など
不安要素があるなら司法書士に相談すること、少なくとも相続登記を行わず放置することのないようにしましょう。