会社設立後に必要となる各種変更登記について
法務局で設立登記を行うことで法人として公的に認められ、会社は設立されます。そしていったん会社を設立したあとも、会社が事業活動を続けていく過程で登記申請が必要となる場面は多くあります。
具体的にどのような場合にどのような登記手続きが必要となるのか、当記事で紹介しています。
登記申請が必要となる主なシーン
「設立登記で登録した情報に変化が生じたとき」に登記申請が必要となります。登記した内容の変更を行う手続きですので、この登記を総称して「変更登記」と呼んだりもします。
比較的頻度の高いものとしては「役員の変更登記」が挙げられます。ほかにも「資本金の変更登記」や「本店移転の変更登記」もあります。
また、事業活動に際して不動産を取得したり売却したり、担保として提供したりすることもあるでしょう。その際は不動産登記も行う必要があります。
役員の変更登記について
変更登記のうちもっとも多く手続きの機会がやってくるのが「役員の変更登記」でしょう。株式会社では任期が法律上定められているため、一定期間が経過すると常に役員に関しての登記申請が必要となるのです。そのほか新たな役員が就任するとき、役員が亡くなったときや辞任したときなども登記を行います。
役員変更が行われる場面
役員変更が行われる主な場面は次のように分類できます。
- 任期満了に伴う変更
- 株式会社では、取締役の任期は原則2年
- 非公開会社の場合は最大10年まで延長できるが、定期的に再任等の変更登記が必要
- 個人的事情による変更
- 役員の急死や病気による退任
- 役員の婚姻や離婚に伴う氏名変更
- 役員の引っ越し等による住所変更(代表取締役等の住所が登記事項となる役員に限る)
- 後継者への世代交代
- 組織再編に伴う経営陣の刷新
登記申請の手続き
役員変更登記に先立って、法律上、まずは株主総会にて役員の変更に関する決議を行うことが求められています。選任や解任、重任などを理由とする役員変更では株主総会の決議が欠かせません。
なお、決議は原則として普通決議ですので、議決権の過半数を持つ株主が参加して、出席した議決権のうち過半数が賛成することによって変更が成立します。
その後、法務局で登記申請を行うのですが、その際「登記申請書」や「株主総会議事録」などの必要書類を用意しなくてはなりません。登記申請に関しては司法書士に依頼することが一般的ですので、手続きを代行する司法書士に相談して必要書類の準備をサポートしてもらうと良いでしょう。
資本金の変更登記について
法人の資本金の額は登記事項ですので、増資・減資を行った際には変更登記を行う必要があります。
たとえば「事業拡大に伴う資金調達」「財務体質の改善」などを理由に増資を行うこともあるでしょうし、「累積赤字を解消する」「過剰資本の調整」などを理由に減資を行うこともあるでしょう。
どちらにしろ、資本金の額が変動したのなら2週間以内に登記の手続きを行わなければなりません。なお、資本金の額を変える場合にも登記申請に先立って株主総会決議等が必要です。特に減資は会社債権者にとって大きな問題であるため、株主総会決議に加え「債権者保護手続」も必要となるため注意してください。
※債権者保護手続:官報公告および個別の債権者への催告を行い、異議申立期間を設ける。
また、資本金の額は法人住民税等にも影響することから、税務署や都道府県税事務所、市町村役場への届出も行うことになります。
本店移転の変更登記について
登記された会社の本店所在地を変更するときにも変更登記を行います。
たとえば従業員数が設立当初から増えてきた場合には物理的なスペースの問題から引っ越しを行うこともあるでしょうし、反対に在宅勤務普及に伴い小さなオフィスへ引っ越す可能性もあるでしょう。より立地の良い場所への移転など、戦略的な引っ越しを行うこともあります。
個人が引っ越した際に住民票の変更を役所に届け出るように、このようなケースでは会社も本店を移転したことを示すため手続きを行うのです。
なお、定款で記載した本店所在地の情報に変更が生じる場合は定款変更のための株主総会決議が必要です。ただし定款に関して最小行政区画(市区町村)までの記載で良いとされているため、地番まで詳細に定めておらず同じ区内・市内での引っ越しであれば定款変更の手続きは必要ありません。
不動産登記について
変更登記とは異なりますが、個人が不動産取引を行った場合に登記を行うのと同じように、会社が土地や建物を取得したり売却したりしたときは不動産登記を行います。
《 会社が不動産登記を行う場面 》
- オフィスビルを売買、贈与、相続等により取得したときは所有権移転登記を行う
- 新社屋や工場を建てたときには所有権保存登記を行う
- 会社所有の建物を取り壊したときには建物滅失登記を行う
- 銀行等からの融資に伴い、会社所有の不動産に抵当権を設定するには抵当権設定登記、完済後には抵当権抹消登記を行う
このとき、登記申請書のほか不動産取得等の原因を示す契約書などを揃えて手続きを行います。なお、不動産取引等に株主総会決議は、取締役と会社の利益相反取引にあたる等の特殊な場合を除き、基本的に必要ありません。
変更登記を怠るとペナルティがある
変更登記に関しては、変更の事由が生じてから基本的に2週間以内に申請を行わなければなりません。申請義務は会社に対して課されますが、代表者がその実務を行う必要がありますので、登記懈怠のペナルティも代表者個人に科されます。
最大100万円の過料(行政罰であり刑事罰の罰金刑とは異なる)を科されるうえ、登記を適切に行っていないことは会社の信用問題にも関わるため、できるだけ早めに対処しましょう。書類作成のミスが登記申請の遅延につながるケースもあるため、手続きに不安がある場合は司法書士に相談・依頼することも検討してください。