株式会社設立のメリット|起業をする方法と形態別の特徴
事業を立ち上げるとき、個人事業として始めることもできますし、株式会社や合同会社を設立して始めることもできます。
このように起業の方法は様々ですが、形態によって運営方法が異なり、設立手続や税金の負担などにも違いがあります。
ここでは設立件数が多い形態である「株式会社」に着目して、そのメリットや特徴を解説します。
起業をするときの形態
何か事業を始めるとき、まず検討することに「事業形態の選択」が挙げられます。
個人事業主として活動する道もありますし、法人を設立する道もあります。さらに法人にはいくつかの種類があり、それぞれ次のように特徴をまとめることができます。
個人事業主 | ・「自営業」や「フリーランス」などとも呼ばれる。 ・立ち上げのハードルがもっとも低く、手続の手間も費用の負担もほとんどない。 ・機動的に動くことができ、小さな事業を始める場合に適している。 |
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株式会社 | ・最終決定権を持つ株主と、経営の委任を受けた取締役が存在し、所有と経営を分けた組織運営ができる。 ・株式を発行することで大きな資金を集めることもできる。 ・株式を上場させればより莫大な資金調達が可能になるが、小規模な株式会社も多く存在している。 |
合同会社 | ・「日本版LLC」と呼ばれるように、アメリカのLLC(Limited Liability Company)を基にできた法人。 ・株式会社と近い性質を持つが、所有と経営が一致しており運営の自由度も高い。 ・小規模で運営することに適しており、設立費用なども比較的少額で済む。 |
一般社団法人 | ・2人以上の人が集まって設立される法人。 ・公益事業のみならず、様々な事業を行うこともできる。 ・利益を出すことはできても、利益を分配することはできない。 |
NPO法人 | ・社会貢献活動を目的とする法人。 ・できる事業内容に限りがあるが、税金面での優遇が受けられる。 ・利益の分配はできない。 |
株式会社を設立するメリット
株式会社を設立することで得られるメリットとして次の事柄を挙げられます。
- 認知度・社会的信用度が向上する
- 資金調達がしやすくなる
- 責任が制限される
- 人に依存せず事業を持続させられる
- 節税効果を高めやすい
各メリットの詳細を以下で説明していきます。
認知度・社会的信用度が向上する
株式会社設立のメリットの1つとして「認知度・社会的信用度が向上する」ということが挙げられます。
厳格な手続を経て法人格が与えられますので、気軽にいつでもだれでも開業できる個人事業主に比べると信頼を獲得しやすいのです。取引の相手方としても安心感が得られます。
具体的には、定款が作成されてその内容が公証人にチェックされていること、資本金の出資をしていること、登記がなされていることなどがその信用度の向上に寄与しています。
また、他の法人と比べても認知度が高いです。本当に信頼できる事業者かどうかはわからなくても、「聞いたことがある名称だ」「よくある会社だ」というだけで少なからず安心できるものです。
合同会社などと比べても会社に対して規制をかける法律が多く、経営者が好き勝手にしにくいことも理由の1つです。
資金調達がしやすくなる
社会的信用度とも関連しますが、株式会社の設立が「資金調達のしやすさ」という面で役立つこともあります。
金融機関から融資を受けるにも信用が必要ですので、同じ実績でも個人事業主より株式会社の方が融資に成功する確率、借入できる金額にも差が出ます。
法人向けの融資や助成金・補助金などの制度も多くありますし、また、株式会社であれば株式の発行によって資金調達をすることもできます。このように資金調達の手段が多くあるのも株式会社であることのメリットといえます。
責任が制限される
個人事業主は無限責任です。事業で負った債務が弁済できない場合、事業用財産以外に対しても差し押さえをされるリスクがあります。
これに対して株式会社の場合、取締役や株主になったとしても、会社の負った債務に対して際限なく責任を負うわけではありません。あくまで別の人格であって、株式会社という別人が負った債務を個人的に弁済しないといけない義務はありません。
合同会社でもこの点は同じですが、合資会社、合名会社のように無限責任を負う社員が存在する形態もあります。
リスクを極端に恐れては積極的な事業展開ができませんが、有限責任であることによって思い切った経営をしやすくなります。
人に依存せず事業を持続させられる
個人事業主の場合、当該個人が亡くなるとその事業主体は終わりを迎えます。その方の相続人が事業用財産を引き継ぐことはできても、異なる事業主体として新たに事業を始めることになります。
一方、法人である株式会社においては、代表取締役が亡くなったとしても会社が消滅するわけではありません。事業をそのまま継続することができます。
人に依存し過ぎず安定的に事業を続けられることは、事業に関わる従業員や取引先、消費者にとっても良いことといえます。
節税効果を高めやすい
個人事業主に比べて株式会社は「節税効果を高めやすい」というメリットも持っています。
どちらの形態でも事業のために必要な支出を経費として計上し、課税所得を小さくすることは可能です。ただ、個人事業主と会社とでは、経費計上できる幅に違いがあるのです。
また、課税される税金とその税率にも違いがあります。個人事業主の場合は所得税として、所得の大きさに対応する税率(5%から45%)が適用されます。累進課税と呼ばれ、所得が大きいほど割合も大きな税負担が発生するのです。
一方の株式会社に課される法人税では、基本的に一律の税率が適用されます。そのため一定以上の利益を出しているのであれば、適用される税率が法人税の方が小さくなり、税負担も小さくなるのです。
株式会社を設立するときに知っておきたいデメリット
株式会社の設立もメリットばかりではありません。次のようなデメリットがあることも理解の上、どの形態で事業を始めるのかを考えましょう。
- 設立手続の負担が大きい
定款認証や設立登記に手数料が必要で、合同会社と比べても費用負担と手間が大きい。 - 役員の選任・再任に費用がかかる
株式会社の運営を維持するにもコストがかかる。例えば取締役には任期の定めがあり、一定期間おきに選任・再任のための登録免許税が発生する。 - 決算公告をしなければならない
官報やWebサイトなどを用いて、貸借対照表を公開しないといけない。掲載料などの負担がかかること、財政状況を外部に知られてしまうことにデメリットがある。 - 税務や労務の負担が大きい
法人税の申告は個人事業における青色申告より申告書作成の難易度が上がる。また、従業員が0人でも社会保険にかかる手続が必要であり、税務および労務など事務的な負担が大きくなる。 - 利益が小さいうちは税負担が大きい
節税効果は高めやすいものの、利益が小さいうちは税負担が大きく所得税に比べて損をするケースもある。例えば法人住民税の均等割は利益が0円でも納税の義務がある。
事業内容や組織の規模、将来の目標など、様々な事柄を考慮して形態を選択すべきです。株式会社など法人を設立するなら登記申請なども必要ですし、税金の負担についても考慮する必要があります。定款の作成に法律上の知識も必要になることでしょう。会社設立に強い専門家に相談することも考えてみてはいかがでしょうか。