親族承継と従業員承継
■親族承継の方法
親族承継とは、現経営者の親族に対して事業を承継することをいいます。親族承継を行う場合、後継者育成、株式移転の準備、関係者への通知、生前贈与、保証や担保という過程を踏む必要があります。
〇後継者育成
親族承継を行うにあたっては、まず、後継者を決定します。そして、承継後を見据えて育成していくことになります。日ごろの仕事に同行させたり、セミナーを受講させたりして、経営の知識を伝えることが多くなっています。
〇株式移転の準備
会社を安定して経営するためには、株式の一定割合を確保する必要があります。事業承継の際には、株式の贈与・売買の準備を行いましょう。現経営者が十分な株式数を保有していないのであれば、買い集めなければならないでしょう。
〇関係者への通知
承継後に滞りがないよう、会社内の役員・従業員や取引先に対して、少しずつ通知していきましょう。
〇生前贈与
準備ができたら、株式の移転を行います。具体的な方法としては、現経営者からの生前贈与が考えられます。遺言を作成し、相続という方法で引き継ぐ方法もあります。
〇保証や担保
最後に、借入金についての個人保証や担保等を後継者に交代します。
■従業員承継の方法
従業員承継とは、会社内部の従業員に対して経営権を承継することをいいます。従業員承継を行うにあたって必要なこととして、候補者の選定・育成、周知、株式譲渡、業務の引継ぎがあります。
承継の手順自体は親族承継の場合と変わりませんが、株式の移転の部分が難しくなります。これは、親族承継であれば相続の延長として株式を贈与できる一方で、従業員承継で株式を贈与してしまうと、現経営者の財産が放棄されてしまうためです。
そこで、従業員承継では贈与以外に、①株式の売買、②経営権のみの移転という方法があります。
対価を伴って株式を移転させることができれば、現経営者の財産保護という問題を生じさせずに済みます。ただし、この場合には買い取る側の資力が条件となるという難点があります。
経営権のみを移転させる方法では、現経営者の財産は保護できますが、株主総会での意思決定が不安定になる場合があります。
神保町法務司法書士事務所では、東京都を中心として、法務相談を承っております。事業承継の流れがわからない、従業員承継を行う上で株式移転の方法に悩んでいる等、事業承継についてお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。