遺産分割協議書の作成費用|専門家に作成を依頼するといくらかかるのか
ご自身で遺産分割協議書を作成すれば準備書類の取得に多少の手数料が発生するのみで、ほとんど費用の負担はありません。
しかしトラブルを防ぐためには法的知識を持った人物が作成作業にあたる必要があり、通常は司法書士などの専門家に依頼を出すことになります。
しかし専門家に仕事に依頼を出すとなればやはり費用が発生してきます。
ここでは「遺産分割協議書の作成費用」に着目して、相続人の費用負担について説明をしていきます。
遺産分割協議書の必要性
相続人が複数いるとき、遺産を分けるために遺産分割協議と呼ばれる話し合いを行うことがあります。
遺産分割の結果は法的トラブルの元にもなり得る重大な事柄ですので、話し合った内容は遺産分割協議書として取りまとめることになります。
こうすることで誰が何を取得したのかが明確化され、証明書として使えるようになるのです。
ただし証明書としての役割を果たすには必要な情報が漏れなく記載され、協議の参加者が自由な意思決定に基づいて同意をしたことが示されていないといけません。
厳格な要件を満たすことなく証明書として機能できてしまうと、誰かが勝手に作成した文書でも遺産分割が有効になってしまいます。
そのため単なるメモとして情報を記載していくだけでなく、裁判上の証拠としても使えるほどの厳格さを備えた文書にすることが重要なのです。
専門家の必要性
「相続人全員の同意をもって遺産分割がなされたこと」を証明する文書とするには、法律問題に精通する専門家へ、作成依頼を出すことが大事です。
もちろん、相続人の方に十分な知識・ノウハウがあれば大きな問題にはなりません。
しかし多くの方は相続に対する高度な専門性は持っておらず、自分で対応するとなれば大きな不安を感じるのではないでしょうか。
こうした不安を払しょくし、確実に、効率的に遺産分割協議書を作成する上で専門家は活躍します。
法律に関わり、よく遺産分割協議書作成の依頼先として選ばれる専門家には次のような種類があります。
司法書士 | 登記のプロとして知られる。 登記申請の手続以外にも、相続の仕組みであるなど法制度のアドバイスをしたり文書作成をしたりが可能。報酬は比較的安い傾向にある。 |
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弁護士 | 法律全般のプロとして知られる。 様々な法律問題に対処でき、特に訴訟対応であるなど紛争への対応が主な仕事。できることの幅が広いが報酬は比較的高い傾向にある。 |
行政書士 | 許認可など行政手続のプロとして知られる。 特定の事業で必要とされる許認可を取得するための手続、文書作成などに対応することが多い。報酬は比較的安い傾向にある。 |
税理士 | 税務のプロとして知られる。 法律のうち税金関連に特化しており、相続においては法律相談というより相続税の計算や申告に主に対応する。 |
遺産分割協議書の作成でかかる費用
遺産分割協議書を作成するにあたっては、相続人であることの証明書、被相続人が亡くなっていることの証明書、相続人の本人確認書類、遺産分割の対象となった財産についての証明書などが必要です。一つひとつは大きな金額ではありませんが、発行には費用がかかります。
そして専門家に作業の代行等を依頼する費用もかかります。金額的にはこちらが特に重要といえます。
これら各種費用について以下で説明していきます。
各種書類の発行手数料
遺産分割協議書作成前に、次の書類を用意しておきましょう。
- 被相続人の出生~死亡までの戸籍
- 被相続人の住民票の除票および戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑登録証明書
- 残高証明書など財産別の証明書
戸籍等をチェックすることで、「確かに亡くなった方の相続人である」ということが証明できます。
遺産分割協議は相続人全員が参加しないといけませんので、必ず戸籍の情報に目を通す相続人調査を済ませておく必要があります。
この戸籍謄本等の取得には、各300円~ほどの手数料がかかります。
また、印鑑登録証明書は「確かにその者の実印である」ということを証明するために使われます。特定の人物の印鑑が使われていることで、当該人物が作成した文書であることが推定されます。これはつまり「そんな文書は作っていない」と後になって揉めるリスクを回避しやすくなることを意味します。
印鑑登録証明書についても発行に300円ほどが費用として発生します。
その他残高証明書なども遺産分割に必要な書類です。財産の価額・価値が不明瞭なまま分割するわけにはいきません。
相続人間での利益をバランス良く調整するためには事前の遺産調査が必要です。
残高証明書等は請求先となる機関によって手数料が異なります。数百円~数千円ほどの費用負担はかかると考えておきましょう。
専門家への依頼費用
遺産分割協議書の作成にかかる費用の大半は「専門家への依頼費用」です。
そして金額については専門家の種類によってある程度の傾向は分かれるものの、結局のところ依頼先により異なります。
同じ司法書士という専門家であっても、「A司法書士:トータル15万円の費用」「B司法書士トータル:10万円の費用」などと結果が分かれます。
そのため依頼費用は決まっていません。大雑把な相場として「数万円~20万円」という金額を挙げることもできますが、具体的な金額は依頼を検討している専門家に聞く必要があります。
また、同じ依頼先でも遺産分割の対象となっている遺産の金額に対応して協議書作成費用が高くなるケースもあります。
もっと言えば、遺産分割協議書だけでなくその他相続手続も併せて依頼を出すことが多く、遺産分割協議書の作成単体で費用が定められていないこともあります。その他手続代行とのセット料金として組み入れられているケースもありますので、依頼前に料金体系は確認しておく必要があるでしょう。
他の手続費用も考えて依頼先を選ぼう
遺産分割協議を行う場面において必要となる作業は、遺産分割協議書の作成だけではなく、その前には相続人の調査や遺産の評価が必要になると考えられます。「そもそも相続の仕組みについてよくわかっていない」「何から手をつければいいのかわからない」と悩むこともあるのではないでしょうか。
また、遺産に不動産があるときは遺産分割後に相続登記の手続もしないといけません。
※相続登記は2024年4月1日から義務化。
そこでその他必要な手続の内容、その依頼費用もトータルで考慮して依頼先を検討するようにしましょう。
もし相続登記が必要な場面であれば司法書士、相続に際して親族間で裁判沙汰になりそうな場面であれば弁護士、などとそれぞれの専門分野に合わせて選定します。