未登記建物の相続手続き~登記の必要性や放置するリスクとは~
「相続した建物が未登記だった」と登記がされていないことに気付くケースがあります。取得時点で登記されていなかったからといって、そのまま放置すべきではありません。
必要な対応について確認しておきましょう。
未登記建物とはどういう状態か
建物を新築したら、本来1ヶ月以内に表題登記を申請しなくてはなりません。しかしながら、登記されないまま放置されている建物も存在しており、これを「未登記建物」と呼んだりもします。
昔に建てられた建物や増築した部分、離れや倉庫といった建物に多く見られ、特に戦前から戦後にかけて建てられた建物は未登記のまま残っているケースが多いです。
ただ、未登記でも建物の所有権自体は認められますし、登記がないからといって建物が存在しないことにはなりません。
相続時に必要になる手続きとは
建物が登記されているかどうかに関わらず、「誰が相続するのか」に関してその他の不動産や遺産同様に遺産分割が必要です。その上で、取得者が定まれば登記申請に取り組みます。
相続物件の取得者を決める
未登記建物に関する登記手続きに進む前に、まずは相続人間で建物を取得する人を決定しなくてはなりません。
相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が未登記建物を相続するかを話し合いで決めます。法定相続人が1人でも欠けると協議が無効になるため、全員の参加が必須です。協議で取得者が決まったら、その内容を「遺産分割協議書」として書面にまとめましょう。
※遺言書で特定の人物による取得が指定されているときはその内容に従う。遺産分割協議で当該物件について話し合う必要はない。
また、遺産分割協議書には未登記建物の所在地、構造、床面積などを記載し、誰が取得したのか明記します。作成した協議書は、今後の登記申請時に必要となりますので大事に保管しておきましょう。
2つの登記申請
未登記建物を相続したときは、①表題登記と②所有権保存登記という2つの手続きに着手する必要があります。
①表題登記 | ・建物の物理的な状況を登記簿に記録する手続き ・土地家屋調査士が建物を測量し、所在、種類、構造、床面積などの建物の表示に関する事項を登記する |
|---|---|
②所有権保存登記 | ・表題登記完了後に行う手続きで、所有権を記録する ・表題部所有者の相続人は、被相続人名義での登記を経由せず、直接自己名義で所有権保存登記を申請できる |
相続人が複数いて遺産分割協議で建物取得者を決めている場合、その相続人の単独名義で所有権保存登記ができます。
なお、登記申請にあたっては、相続を証明する戸籍謄本や遺産分割協議書などを添付します。
申請にかかる費用
未登記建物の登記が必要な場合、表題登記と所有権保存登記の両方の手続きが必要となるため、登記済み建物の相続登記と比べて費用が高額になる傾向があります。
その大きな要因の1つに「土地家屋調査士への報酬の発生」が挙げられます。
建物の規模や複雑さによって変わりますが、一般的な住宅であれば10万円~15万円程度が目安です。建物が古く図面がない場合、測量に時間がかかり報酬も高くなってきます。
また「司法書士への報酬」については、所有権保存登記で3万円~5万円程度が相場です。相続人が多い、遺産分割協議書の作成が必要といった事情があり、相続手続き全般について相談・依頼を行うときは別費用が加算されます。
そのほか、「登録免許税」も必要です。表題登記には登録免許税はかかりませんが、所有権保存登記は固定資産評価額の0.4%ですので、仮に評価額が500万円とすれば2万円を納付することになります。
未登記のまま放置していた期間が長いと過去に遡って調査する必要が生じることもあり、専門家の報酬が高くなる可能性があることも覚えておくと良いでしょう。
未登記のままだとどうなる?
未登記のまま放置することのリスクがいくつか考えられます。
- 建物を売却したくてもなかなか買い手がつかない
・・・金融機関は融資の担保として建物に抵当権を設定するが、未登記建物だと抵当権を設定できず、買主が住宅ローンを組めない。買主にリスクがあるため、なかなか購入者が現れない。 - 建物を取り壊したときの建物滅失登記ができない
・・・建物滅失登記は、登記されている建物が存在しなくなったことを法務局で登記する手続き。未登記建物にはそもそも登記がないため、この手続きが行えない。ただし市町村役場に「家屋滅失届」を提出する必要がある。 - 相続が繰り返されると権利関係が複雑化する
・・・現在の相続人が亡くなり、次の世代に相続されると、関係者がさらに増える。何代も経過すると、誰が所有者かの証明が難しくなり、登記しようとしても大変な労力がかかってしまう。
このようにさまざまな問題が生じるため、相続手続きの一環で、未登記建物への対処も進めるようにしましょう。司法書士にご相談いただければ、相続手続きのことや登記申請のこと、必要な対応についてのアドバイスが可能です。
