相続手続きの流れを解説!各種調査や遺産分割、登記の手順とは
相続が開始されると、相続人、遺族の方は多くの手続きに追われることになります。期間に制限が設けられているものもあるなか、ミスなく処理をしていかなければなりません。
この記事では相続手続きの全体像を示すとともに、ポイントとなる手続きについて具体的な内容を説明していきます。相続開始後の手続きに不安があるという方はぜひ参考にしてください。
相続手続き全体の流れ
大まかに相続開始後の流れを示すと以下のようになります。
1. 遺言書に関する手続き
2. 相続人の調査に関する手続き
3. 財産調査に関する手続き
4. 遺産分割に関する手続き
5. 相続税の申告に関する手続き
6. 登記に関する手続き
さらに各過程には細かい手続きがありますので、相続人など一定の手続きを進めるべき方は、相続開始後一度専門家に相談しておくと良いでしょう。
遺言書に関する手続き
厳格に順序が決まっているわけではありませんが、遺言書探しは最初のうちに着手しておきましょう。遺言書の確認をせずに遺産分割をするわけにもいかないからです。そこでまずは被相続人の自宅等を確認し、遺言書が作成されていないかどうかを調べましょう。
遺言書が見つかった場合、すぐに家庭裁判所に提出し、検認の請求をしましょう。間違っても封を開けないようにしなければなりません。書き換えなどをしなかったとしても、相続人間で起こるトラブルの原因となりやすいです。そこで開封も家庭裁判所にて、相続人等の立会いの下で行います。
なお検認は、その時点における遺言書の状態を確認する手続きのことです。遺言内容の有効性を担保するためのものではありませんが、遺言書の偽造等を防ぐ役割を担います。
相続人の調査に関する手続き
遺産分割、また相続に関わる各種手続きにおいては、相続人の把握ができている必要があります。参加すべき相続人がいない状態で行った遺産分割協議は無効になりますし、前もって相続人の存在を確定させておかなくてはなりません。
また、被相続人との関係を客観的に示すよう求められる場面もありますので、その意味でも戸籍謄本等の取得をしておきましょう。相続人に関する現在の戸籍謄本、被相続人に関する出生から死亡までの連続した戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本など)をすべて用意します。
なお、謄本については以下のように分類されることがあると知っておきましょう。
●戸籍謄本:
戸籍内の全員の内容を複写したもの
電磁的に作成されたものは戸籍全部事項証明書という
●戸籍抄本:
戸籍内の一部の内容を複写したもの
家庭裁判所の手続きでは使えないため注意
●除籍謄本:
戸籍内の全員が戸籍から抜けた状態の戸籍謄本のこと
電磁的に作成されたものは除籍全部事項証明書という
●改製原戸籍謄本:
戸籍制度が改正され、戸籍のフォーマットが変わった場合における、書換え前の戸籍謄本のこと
書換え前の戸籍は破棄されず改製原戸籍として保管されていたり、最新の戸籍にない情報が除籍謄本から見つかったりもします。そのため除籍謄本や改製原戸籍謄本を取得しておく必要があるのです。
戸籍謄本等を手に入れる方法
戸籍謄本等は「本籍地の市町村役場窓口に行く」または「郵便で申請」する方法により手に入れます。
郵便で申請するには、申請書や返信用封筒、身分証明書の写しを同封して送るのが一般的です。ただし、申請先の役場に何通必要な戸籍が保管されているのかが分からず、一回の申請で済むとは限りません。急いでいる場合には注意が必要です。
財産調査に関する手続き
遺産を分配していくためにはその財産の内容を整理していかなければなりません。
そこで、被相続人が契約していた金融機関等を確認していきましょう。どの金融機関と契約をしていたのか、遺言書などに記録が残されていればすぐに見つけられますが、そうでない場合には大変です。通帳を調べたり、送付物を調べたりして手がかりを見つけていかなくてはなりません。
引越しをしているにもかかわらず住所変更の手続きをしていない場合は、送付物も届かなくなっているためより契約先を見つけるのが困難となるでしょう。
また、不動産に関しては比較的価値が大きく重要な遺産と言えます。家屋や土地、土地についた権利関係なども調べるとともにどの程度の価値があるのか、専門家に評価してもらうと良いでしょう。
遺産分割に関する手続き
相続人や相続財産が整理できれば、遺産分割の手続きに進みます。
原則は相続人間での話し合いで決めることになります。この話し合いを「遺産分割協議」と呼びます。協議内容は「遺産分割協議書」として取りまとめ、書面としてしっかりと記録しておくようにしましょう。後から協議に関するトラブルが出ないようにすべきです。
遺産分割調停について
当事者間だけでの話し合いで上手く分割ができなければ、「遺産分割調停」も利用しましょう。遺産分割調停とは、家庭裁判所の介入を受けつつ、遺産分割の話し合いを進めていく手続きのことです。
申し立て後、家裁は調停委員2名以上を選任します。当該調停委員が間に立って双方の主張を聴きつつ、遺産分割の方法に関して着地点を探していくことになります。
なお、調停であっても最終的には当事者間の合意が取れなければ遺産分割ができません。そこで合意ができない場合には、原則として審判手続きに移行します。家裁が遺産の種類、性質等を考慮しつつ、分割方法を判断することになります。
相続税の申告に関する手続き
各々相続する財産の内容が決まれば、取得した財産の価額に応じた相続税の申告手続きも進めていきましょう。遺産に係る基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算定され、この額を超えなければ納税も申告も必要ありません。
他方、土地などの課税価格が大きな財産を取得した場合には納税義務が課される可能性が高くなりますので要注意です。
登記に関する手続き
不動産を取得した場合、登記も忘れずに行うようにしましょう。
不動産登記はこれをしなければ違法、ということではないのですが、所有権等をめぐって種々の問題が生じることになりますので早期に対応しておくべきです。
実際、所有者不明の土地が社会的な問題となっています。相続により得た不動産につき登記がされず、所有者がわからなくなり、まちづくりなどを進めるための公共事業等にも悪影響を及ぼしているのです。また、未登記が空き家の増加も招いていると言われています。
不動産登記にあたり複雑な処理を行う必要はありません。基本的には、登記に必要な書類を集め、登記申請書を作成、当該物件を管轄する法務局にて申請。登記完了後、登記完了証・登記識別情報通知書を受け取る、といった流れです。ただ、一般的な公的手続と比べると専門性が高いです、そこで各相続手続きに関するサポートを受けるのと併せて、不動産登記に関しても専門家に依頼すると良いでしょう。