遺言書が無効になるケースとは
民法の規定する遺言の方式には、普通形式と特別形式があります。それぞれの書き方や具体的な手続きは、民法967条~984条に規定されていますが、いずれの方式も「遺言書」という証書を作成しないと、遺言としての効力は生じません。特別法式が利用されるのはある特殊な場合のみですので、ここでは一般的な普通方式の自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言についての無効となる可能性のあるケースを検討してみたいと思います。
本人が自書する自筆証書遺言は、とくに立会人も証人もいらないため、最も簡単に作成することができる遺言書ともいえますが、法律上、次の条件を満たしていないと無効になってしまう場合があるので注意が必要です。
まず、全文を自筆にする必要があります。表題、本文、作成した日付、署名などを自分で書かなければなりません(民法改正により、財産目録については、代筆又はパソコン等での作成されることも認められることとなりました)。遺言内容の録音や録画、家族などによる代筆も無効です。次に、平成30年7月10日、2019年3月5日というように正確な作成日を記入する必要があります。日付が具体的に特定されれば「〇年の自分の誕生日」でも良いと考えられますが、「○年○月吉日」と書いて無効になった事例がありますので、日付の記載は年月日明確に特定しておくことをお勧めいたします。内容が矛盾する遺言書が複数ある場合には、新しい日付のものが有効になります。
また、自筆で署名する必要があります。通称でなく、必ず戸籍上の氏名を、苗字名前ともにきちんと書きます。氏名の前に住所を書くようにすると、本人であることをより明確にすることができます。さらに、署名の後に、はっきりと押印する必要があります。使用する印鑑は認印でも拇印でもかまいませんが、いざ相続の際に不満のある相続人から争いを起こされないように、より確実なものにするためには可能であれば実印の方が良いでしょう。上記の条件どれが欠けていても、遺言書は法律上無効になってしまいます。また、満15歳未満の人の遺言や2人以上の医師の立会いがない成年被後見人の遺言も無効です。遺族が遺言の存在に気づかなかったり、隠したり、変造したりするおそれもあります。さらに内容が不明確である場合にも、無効になってしまうおそれがあります。
秘密証書遺言は、公証役場で作成するという点で公正証書遺言と共通しますが、遺言書の内容を密封して、公証人も内容を確認できない点が異なります。
したがって、公証人や証人が確認できない内容の面で、不備や不明確な点があることにより法律上無効になってしまうおそれがあります。
安全確実という意味では、費用と手間はかかりますが、遺族が相続手続きをしやすいことを考えると公正証書遺言にしておくのがおすすめです。
公正証書遺言は、本人が公証人役場に行って、証人の立ち会いのもと、公証人に作成してもらうものです。そのため、記載要件の不備によることなどで無効となるケースはほとんどないと考えて問題ありません。公正証書遺言は公証役場にその原本が保管されており、照会も可能なので、その存在が確実なものであるため、家庭裁判所の検認も不要となります。遺言の種類のうち、最も効果が確実で改ざんや紛失などのおそれが少ない方法といえます。もっとも、遺言作成時において遺言者に遺言能力がなかった場合(認知症等で意思能力がない状態であったとき)、証人が不適格であった場合(未成年者、推定相続人、受遺者等)、詐欺や脅迫により遺言者の真意に基づかない内容となった場合等には遺言書は無効となります。
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