定款の作成方法と注意点!会社設立で必須の定款について解説
会社を設立するには「定款」が欠かせません。法律上必要とされており、どんな会社を立ち上げる場合でも定款作成の作業は省くことができません。
あらゆる会社に存在する定款はどのようにして作成するのか、ここでは、株式会社設立時の定款について当記事で解説します。
定款とは
定款(ていかん)は、会社の組織や活動内容についての自治規範のことです。「会社の憲法」などと表現されることがあるように、会社における最上位のルールとして機能します。
定款は発起人(ほっきにん)と呼ばれる起業者自身が作成します。
この発起人のほか、株主、そして会社の機関を拘束する効力も定款には備わっています。会計監査人なども会社の機関に準ずるものであるため、作成した定款の内容に従わなければなりません。
第三者に対しても一定の場合には効力が及びます。もちろん、一会社が作成する定款の内容に一般の第三者が法的に拘束されることはないのですが、株式を取得しようとするなど会社と接触するときには定款の内容に拘束されることがあります。
なお、定款の内容は後から株主総会の特別決議を経て変更することもでき、変更後の定款に対して会社設立時の定款は特に「原始定款」と呼ばれます。
定款を作成する方法
会社法は、少なくとも絶対的記載事項を定めなければならないと規定しています。また、署名または記名押印、公証人による認証も必須です。
逆に言えば、これらの基本を押さえておくことで残りの部分は発起人が自由に定めることが可能ということです。もちろん、法令に反する内容を定款に定めることはできませんが、好きな構成・フォーマットで作成してもかまいません。
とはいえ多くの会社、とりわけ上場企業などには共通項が多いです。傾向としては、定款に記載する事項を縮小し、たとえば、株式の取り扱いなどは定款の委任を受けた株式取扱規則に規定される例が増えています。また、取締役会の運営についても同様で、取締役会規則などの下位規則に委任されることが多いです。
絶対的記載事項の検討
株式会社の場合、次の事項は必ず記載しないといけません。①~⑤を定め、そして⑥についても会社設立手続が終わるまでには定めなければなりません。
- ① 目的
会社のする具体的事業のこと。登記事項でもある。事業活動の内容を「目的」として表示し、法律上はその事業目的の範囲内に会社の権利能力が制限される。自由に事業の種類を定めることはできるが、公序良俗に反する内容は認められない。 - ②商号
会社の同一性を示すための名称であり、登記事項でもある。原則として自由に定めることができるが、不正な目的で他社と誤認されるような商号にすることは認められない。また、同一住所かつ同一の商号を登記することもできない。 - ③本店の所在地
会社の主たる営業所の住所のこと。登記事項でもある。本店の所在地が設立登記や組織変更登記、合併等の登記の管轄となる。裁判管轄、債権債務の履行地などの基準地にもなる重要な事項。 - ④会社の設立時に出資する財産の価額またはその最低額
発起人や株式引受人等がする出資額のこと。この出資額がそのまま資本金額となることも多い。運転資金や税金とのバランスも考えて決めることが大事。 - ⑤発起人の氏名または名称および住所
発起人は1株以上の株式を引き受けないといけない。そこで氏名や名称、住所に加え、引受株数も1つの条項に併記するのが一般的。 - ⑥会社が発行できる株式の数
株式会社が発行できる株式の総数のこと。登記事項でもある。会社が設立されるまでには必ず定めないといけないが、株式の数を先に定めるとなれば設立手続の硬直化のおそれがある。そこで設立過程の状況を見つつ判断し、会社設立手続が完了するまでに定めれば良い扱いになっている。
- ① 目的
会社機関の設計
取締役会や監査役など、会社機関の設計も定款で行います。
次の機関を設ける会社が多いです。
● 株主総会
● 取締役
● 取締役会
● 監査役
複雑な機関設計をするほど定款に記載すべき内容も増えてきますが、上記機関設計の場合だと、以下の章立てにより構成されるケースが多いです。
- 1.総則
目的や商号、本店の所在地など、会社の根本原則を記載する章。 - 2.株式
発行可能株式総数や単元株式、株式譲渡制限に関することなどを記載する章。 - 3.株主総会
株主総会の招集やその招集権者、議長、決議方法、議決権の代理行使のことなど記載する章。 - 4.取締役および取締役会
取締役の員数、任期、代表取締役の選定、取締役の報酬などを記載する章。 - 5.監査役
監査役の員数、任期、監査役の報酬などを記載する章。 - 6.計算
事業年度や剰余金配当の基準日などを記載する章。
- 1.総則
- 7.附則
変態設立事項、設立時に出資する財産の価額または最低額、発起人の情報、経過的事項などを記載する章。
書面または電磁的記録として作成
定款に必要な事項を記載した後、発起人の全員でこれに署名または記名押印をしないといけません。
(定款の作成)
第二十六条 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
2 前項の定款は、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)をもって作成することができる。この場合において、当該電磁的記録に記録された情報については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
また条文にあるように、定款は書面としてではなく、電磁的記録として作成することも法的に認められています。この電子定款として作成することで、印紙税がカットできるなどのメリットが得られます。
公証人の認証を受ける
原始定款は、公証人による認証を受けないといけません。
(定款の認証)
第三十条 第二十六条第一項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。
認証は、会社設立時のみ必要な手続です。設立後、定款の内容を変更したとしても再度認証を受ける必要はありません。
なお認証には、公証人手数料として3~5万円の費用の支払いが必要です。さらに電子定款でない場合には印紙税4万円も必要です。
定款作成時の注意点
定款に記載する事項により個別に注意すべきことはありますが、ここでは原始定款作成時に最低限押さえておきたい注意点を紹介します。
目的の定め方
絶対的記載事項の1つである「目的」を記載するとき、書き方・表現方法に注意しましょう。
会社の権利能力は、この目的に定めた内容に制限されるのが基本の考え方です。会社のする事業内容を事細かに書き記す必要はありませんが、目的から外れた事業を遂行することはできないと考え、慎重に検討を進めましょう。
抽象的な表現にすることで、会社のできる事業内容に幅を持たせるのも1つの手です。ただ、その後さまざまな取引を始めるときに他社や株主から信用を獲得することが重要であるところ、「何をしている会社なのかよくわからない」という印象を持たれるのも良くありません。
何より、許認可が必要な事業を始めるのであれば抽象的な表現ではいけません。「介護保険法に基づく居宅介護支援事業」「一般および特定労働者派遣事業」などと許認可申請を前提とした書き方をしましょう。
定款変更は容易にできない
原始定款は会社の事業が始まる前に作成するものですので、どんなルールを設けるべきか具体的なイメージが掴みきれないこともあるでしょう。特段の必要性を感じていない段階から複雑な機関設計をしたり、厳格なルールを設けたりしなくても良いです。実際に会社運営を行う中で必要な条項の追加を検討していくのでもかまいません。
ただ、定款変更は気軽にできるものではありません。定款変更は株主総会での特別決議が必要だからです。この点には留意し、どこまで最初に定めるべきか、どのルールを後から検討するのか、その線引きを慎重に考えなくてはなりません。
株主が増えた後だと、発起人であった人物の意見が揃っていても定款が変更できないことも起こり得ます。
法律の専門家にチェックしてもらう
定款の作成は発起人の義務ですが、司法書士や行政書士、弁護士などの法律家を頼ることに制限はありません。むしろ疑問に思ったこと、わからないことは積極的に相談すべきです。会社設立後にトラブルが起こって事業が滞ってしまうような事態を避けるため、プロの意見も交えて設立手続を進めましょう。
定款についても条文の表現や機関設計の内容などをチェックしてもらう、あるいは一緒に記載内容を考えてもらうなどの対応を取ることを考えてみましょう。