みなし相続財産とは?3つの代表例を紹介
相続税の課税は、亡くなった方が所有していた財産に対してのみなされるわけではありません。「みなし相続財産」と呼ばれる財産についても課税の対象となるため注意しなければなりません。
そこでみなし相続財産とは何か、具体例を挙げてこの記事で解説をしていきます。
みなし相続財産とは相続税法により課税対象になっている財産のこと
もともと被相続人が所有していた財産は広く相続税の課税対象となります。被相続人の持っていた土地や家屋、現金、預貯金、自動車などは純粋な相続財産ですので当然のこととも言えます。
しかし実質的には相続財産を取得したのと同じ効果が生じる類の財産もあります。
詳しくは後述しますが、被相続人が保険料を負担していた生命保険金などの財産が該当します。形式上の違いから相続税が課税されないとなれば、課税を避ける目的で財産の形を変えるという行為が横行しかねません。
それでは課税の公平を欠いてしまいますので、相続税法では以下のような定めが置かれています。
(相続又は遺贈により取得したものとみなす場合)
第三条 次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。この場合において、その者が相続人であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。
「次の各号のいずれか」として具体的な課税対象となる財産が定められています。それらが「みなし相続財産」です。
主なみなし相続財産
みなし相続財産に関して知っておきたいのは以下3点です。
●生命保険金
●退職手当金
●定期金
それぞれの詳細を説明していきます。
生命保険金
被相続人が生命保険に加入していたときには要注意です。
被相続人の死亡により遺族が保険金を受け取った場合、その保険金が「みなし相続財産」となるからです。
ただし少額の取得の場合、考慮する必要がないケースもあります。
一定額までは非課税で良いとされている範囲が定められているからです。
これを「非課税限度額」と呼び、以下の計算式に従い算出をします。
非課税限度額 = 500万円×法定相続人の数
また、相続税の申告は各人で行うため、各々の取得分に対応した計算も必要となります。
そこで個別の非課税額については以下の計算式に従って算出をします。
個別の非課税額 = 非課税限度額×(実際に取得した保険金÷保険金の総額)
つまり、
法定相続人が3人いる場合には非課税限度額が1,500万円となり、
総額1,800万円の保険金を均等に分け合い各々600万円を取得したのなら、
個別の非課税額は(1,500万円×1/3の計算により)500万円、そして(600万円―500万円の計算により)100万円に課税がなされます。
保険金の総額が課税限度額以下である場合には相続税を気にすることなく取得することが可能です。
なお、生命保険に関しては“被相続人以外が契約者ではあるものの、被相続人が保険料の負担をしていた”という場合にも注意しなければなりません。
例えば妻が被保険者となっており、保険料の支払いをしていた夫が死亡した場合を考えてみましょう。相続開始時点で保険事故はまだ発生していませんが、「生命保険契約に関する権利」は課税として扱われます。
被相続人の財産が当該保険に流れていることに変わりはないからです。
ただし、「生命保険契約に関する権利」についての課税評価額は実際に支払いをしてきた保険料ではなく、解約返戻金の金額であると考えられています。
退職手当金
退職手当金も生命保険金と同じようにみなし相続財産となります。
“500万円×法定相続人の数”が非課税枠となること、相続人個別の非課税額が退職手当金の総額に対する取得割合から算出されることも同じです。
ただし、ここで言う「退職手当金」の内容についても留意する必要があります。
必ずしも退職手当金という名称で支給される必要はなく、それと同視される財産であればすべてみなし相続財産として扱われます。
例えば「死亡退職金」「功労金」「弔慰金」などの名目で支給されるものも課税対象です。
また、金銭のみならず葬祭料や花輪代であっても相続税法上は計算に含めることとされています。
しかしながら、被相続人の死亡後3年を超えて支給されることが確定したのであれば、相続税は課税されません。
定期金
「個人年金等のように定期的に支給される金銭」は定期金と呼ばれ、こちらもみなし相続財産となります。
個人年金の掛け金を被相続人が支払っており、受取人として相続人である配偶者または子が設定されているようなケースでは相続税の計算に含めなくてはなりません。
また、「契約に基づかない定期金に関する権利」も課税対象です。
例えば被相続人が退職年金の契約により退職金の受け取りを継続しており、満額の受け取りを終える前に相続が開始されるようなケースです。
退職金の残額に関しては、相続人に契約に基づかない権利があるとして受け取ることが可能です。
そしてその分については、契約に基づいて受け取る定期金一般と同様に扱われて課税の対象になるのです。
その他「国家公務員共済組合法に基づく遺族年金」「地方公務員等共済組合法に基づく遺族年金」「厚生年金保険法に基づく遺族年金」なども同様の形で支給されますが、各根拠法で別途非課税規定が設けられているため相続税の課税は受けません。