遺言執行とは|遺言執行者の役割・作業内容や選任の方法について
遺言書を作成するときは、遺言執行に係る作業の負担についても配慮しましょう。
そのうえで、必要に応じて遺言執行者を指定、もしくは指定をする人物を定めるなどして相続に備えることをおすすめします。
当記事ではまず「遺言執行とは何か」について説明し、その後遺言執行者についても解説していきますので、遺言書を作成しようとしている方や相続人の方なども目を通していただければと思います。
「遺言執行」って何?
人が亡くなった後、その人の財産はどうなるのでしょうか。
通常、法律で決められた相続人に決められた割合で財産が分けられます。しかし、もし故人が「自分の財産はこうやって分けてほしい」「この人にこれをあげたい」という自分の意思を残していたらどうでしょうか。この意思表示のために作成されるのが遺言書です。
さらに、その遺言書に書かれた内容を実際に実現することを「遺言執行」と呼んでいます。
具体的にどんな行為のことか
遺言執行では、故人の意思を実現するためにさまざまな行為を行います。
例えば、次のような行為です。
- 遺言書に書かれた通りに財産を相続人に分ける。
- 遺言書で指定されていた人に、特定の品物を渡す。
- 遺言書で寄付するように書かれていれば、その手続きを行う。
- 故人の借金があれば、債権者に対して相続財産から当該債務の弁済を行う。 など
遺言執行が行われるのは、故人の意思を尊重するためであり、相続人同士のトラブルを防ぐためでもあります。
遺言執行を行う「遺言執行者」
遺言執行者とは、遺言書を作成した方が亡くなった後に遺言の内容を実現するために必要な一切の行為を行う権利と義務を持つ人のことです。
役割、具体的な作業の流れを説明していきます。
主な役割
遺言執行者に求められている役割は次のとおりです。
役割 | 詳細 |
---|---|
相続財産の管理 | 故人の預貯金、不動産、株券などの財産を調査し、適切に管理する。 例)預貯金の解約、不動産の売却、株式の名義変更などにより財産を保全する。 |
遺言内容の実行 | 遺言書に書かれた内容を忠実に実行する。 例)遺産の分割方法、特定の人物への遺産の贈与など、故人の意思を実現するための手続き。 |
相続人への通知 | 遺言の内容や相続手続きについて、相続人に通知を行う。 例)遺言書の内容を伝え、遺産分割協議の日程などを連絡する。 |
財産目録の作成と交付 | 故人の財産を一覧にした財産目録を作成し、相続人に交付する。 |
作業の流れ
遺言執行の作業の流れをかんたんに紹介します。
- 就任通知書の作成・交付
- まずやるべきは、自らが遺言執行者に就任したことを相続人へ知らせること。
- 速やかに 就任通知書 を作成し、相続人全員に送付する。
- 相続財産の調査
- 故人がどのような財産を残していたのかを調査する。
- 金融機関や役所、証券会社などに問い合わせたり、故人の自宅や書類などを確認したりして、財産の状況を把握していく。
- 相続人の調査
- 戸籍謄本などをもとに、相続人を明らかにしていく。
- 人数やそれぞれの相続分なども明確にしていく。
- 財産目録の作成・交付
- 調査した相続財産をまとめ、財産目録を作成する。
- 財産目録には財産の種類、数量、評価額なども記載する。
- 遺言内容の実行
- 預貯金の解約、不動産の名義変更、株式の譲渡などを行う。
- 特定の人に遺産を贈与(遺贈)する場合は、その方に財産を引き渡す。
- 負債の返済を指示されている場合は相続財産から返済する。
- 必要に応じて司法書士や税理士などの専門家と連携。
- 任務完了後の報告
- すべての遺言執行業務が完了したら、相続人に報告する。
遺言執行者の選任について
遺言書を作成するときは遺言執行者の選任についても検討しましょう。また、遺言執行者が定められていないときでも、事後的に相続人らによってこれを選任してもらうことも可能です。
必須ではない
まず知っておきたいのは、「遺言書の作成時に遺言執行者の指定は必須ではない」ということです。
必ずしもこれを指定する必要はなく、記載がない遺言書も有効です。
ただし、以下のケースでは必要となりますのでご注意ください。
- 遺言による認知を行いたいケース
→ 非嫡出子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子)を認知する場合。遺言書を使った認知は、遺言執行者が認知の届け出を行う必要があるため選任が必要。 - 相続人の廃除を行いたいケース
→ 相続人の中に、遺言者に対して虐待や侮辱を行った人物がいる場合、その人物を相続から除外することができる。ただしこの手続きは家庭裁判所で行う必要があり、遺言執行者も必要とされる。
選任の方法
遺言執行者の選任方法には、主に 3種類が挙げられます。
3つの選任方法 | |
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遺言者が遺言書で指定する | 遺言書の中で直接、「○○を遺言執行者に指定する。」などと記載することで指定できる。 もっとも一般的な方法。 |
遺言執行者を指定する人を決める | 遺言書で「遺言執行者を指定する権限を第三者に委託する」ことも可能。これにより、相続開始時の状況に応じて適切な人物を選任してもらうことが期待できる。 |
家庭裁判所に選任してもらう | 「遺言書での指定がない場合」「指定された方が亡くなったり、就任を断ったりした場合」には、家庭裁判所に申し立てて選任してもらうこともできる。申立ては、相続人、受遺者、遺言者の債権者などが行う。 |
家庭裁判所に申し立てをするときは裁判所公式 HPを参考にすると良いです。
参考: 裁判所「遺言執行者の選任」
遺言書の作成に関しては司法書士にご相談ください。