商業登記・法人登記・会社登記の違いとは?登記の種類を紹介
会社などを経営する上で登記手続を避けることはできません。必ず最初に登記をしなければなりませんし、経営を続けていく中で何度も登記を行うことになります。
ただ、「登記」と一口に言っても色んな種類がありますので、自身が関わっている組織のタイプに応じて必要な手続内容等は変わってきます。
よく聞くものとしては「商業登記」「法人登記」「会社登記」の3つが挙げられます。以下でそれぞれの意味と違いについて解説していきます。
商業登記とは
商業登記とは、商法や会社法により定められた、会社等の一定事項を公示するための制度です。
商業登記の対象となる会社等とは、具体的には「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」「特例有限会社」のことを指します。
そして公示する一定の事項とは、会社の「名称」「所在地」「役員情報」「資本金」「目的」などの情報のことです。
会社の設立に関する登記から、いったん登記した事項に変更が生じた場合の変更登記などもすべて商業登記に含まれます。
商業登記の例
商業登記の手続を要することになるのは、会社設立のほか、以下のような変更が生じた場合です。
- 資本金の増加
- 支店の設置
- 本店・支店の移転
- 商号変更
- 役員変更
- 組織再編(分割・合併・株式移転・株式交換)
- 種類株式
- 会社解散
これらはあくまで例であり、他にも商業登記の手続が必要になるケースはあります。
また、手続の際には所定の必要書類を用意しなければなりませんし、登録免許税の納付も必要となりますので若干の金銭的負担も生じます。
下表に必要書類や登録免許税に関する基本的な情報をまとめました。
基本的な | 定款 | |
---|---|---|
印鑑証明書 | ||
議事録 | ||
就任等を証明する書面 | ||
登録免許税 | 資本金の増加 | 増加する資本金の額の0.7% ※最低額3万円 |
支店の設置 | 1か所あたり6万円 | |
本店・支店 | 1か所あたり3万円 | |
商号変更 | 1件あたり3万円 | |
役員変更 | 1件あたり3万円 ※資本金の額が1億円以下なら1万円 | |
会社解散 | 1件あたり3万円 | |
申請方法 | 窓口申請 | ・管轄の法務局に登記申請書類を持参して申請する方法 ・法務局の相談窓口が利用できるのがメリット(要予約) ・法務局に出向く手間や時間が必要になるのがデメリット(開庁時間は平日8時30分~17時15分まで) |
郵送申請 | ・管轄の法務局に登記申請書類を郵送で送って申請する方法 ・直接法務局に行くことなく申請できるのがメリット ・審査が書類の到着後になるため、完了までの期間が長くなってしまうのがデメリット(書類の不備にもなかなか気づけない) | |
オンライン申請 | ・インターネットを介して申請する方法 ・レターパックの用意も必要なく、もっとも効率が良いのがメリット ・専用ソフトのダウンロードや電子署名を使えるようにしなければならないなど、環境整備に手間がかかるのがデメリット ・司法書士の実務では、申請をオンラインで行い、添付書面を持参又は郵送する方法を用いる事務所が多いようです。 |
なお変更登記の申請は、「変更が生じてから2週間」以外に行わなければなりませんので注意しましょう。
法人登記とは
法人登記も、名称や法人の所在地、役員の氏名などの情報を公示する制度である点商業登記と同じです。
ただし法人登記が必要な法人の種類に大きな違いがあります。法人登記は「会社以外の法人」が対象とされており、代表的なものとしては「一般社団法人」「一般財団法人」「NPO法人」「社会福祉法人」「医療法人社団」「宗教法人」「学校法人」などが挙げられます。
また、各種法人の形態により、法人運営のための準拠法や登記事項が異なりますので注意が必要です。
法人登記の例
例えば学校法人の場合、設立時にはもちろん、会社で言うところの定款にあたる「寄附行為」に記載の事項に変更があったときにも法人登記を行わなければなりません。
事務所の新設や移転、資産総額の変更、理事長の就任・退任、法人の解散などの事由が起これば登記手続が必要になると覚えておく必要があります。
また、これらの事項の変更をするには「理事会の議決」を事前に経ていなければなりません。さらに「所轄庁の認可」も効力を生じさせるために必要ですので、いきなり法人登記ができるわけではありません。
なお変更の効力が生じたときから2週間以内に登記が必要になる点は商業登記と同じです。
会社登記とは
会社登記と呼ばれるものもありますが、実はこれは商業登記のことです。
商業登記のうち、特に会社設立時に行う登記を指して「会社登記」と呼ぶことがあるのです。そのためまったく別の種類の登記であるとの勘違いをしないように注意しましょう。
会社登記で必要になるもの
会社登記は設立登記を指して呼ぶことが多いです。その前提のもと、会社登記に関して最低限必要になるものを下表に示します。
必要書類 | 設立登記申請書 | |
---|---|---|
定款 | ||
登録免許税納付台紙 | ||
発起人の決定書 | ||
取締役の就任承諾書 | ||
取締役の印鑑証明書 | ||
監査役の就任承諾書 | ||
印鑑届出書 | ||
出資金の払込証明書 | ||
登録免許税 | 株式会社 | 資本金の額の0.7% ※最低額15万円 |
合同会社 | 資本金の額の0.7% ※最低額6万円 | |
合資会社 | 1件あたり6万円 | |
合名会社 |
商業登記・法人登記・会社登記の違い
以上をまとめると、「商業登記は株式会社などの会社で必要になる登記」「法人登記は会社以外の法人で必要になる登記」「会社登記は、商業登記のうち特に会社設立時の登記を指す」という違いがあります。
ただし、実務上は厳密な区分がなされず、同じ意味で使われることがあったり設立に限らず広く会社登記と呼称されたりすることもあります。そのため正しい意味を把握するためには、話の流れから、どの登記のことを指しているのだろうかと考えることが大切です。