相続放棄の方法や必要書類・費用について
亡くなった方が多くの借金をしていた場合など、資産を上回る負債が残っているときは相続放棄を検討することになるでしょう。「相続をしない」という選択を採り、リスクを回避するのです。
そのための手続や必要書類をここにまとめます。
相続放棄をする方法
相続放棄は、相続人となった方自身が行えます。ただ、手続には法律のことなど専門的な知識が必要となるため、司法書士などの専門家にも相談しながら準備を進めていきましょう。手続の一部、あるいは全部を代理で進めてもらうこともできます。
もしご自身で相続放棄をするのなら、次の手続に対応していくことになるでしょう。
- 相続放棄に必要な書類と費用を準備する
相続放棄をするには申述書の作成が必要で、相続する立場にあることを証明する戸籍謄本等が必要(詳しくは後述)。また若干の費用も発生する。 - 遺産の調査をする
相続放棄後の撤回はできないため、被相続人の相続財産を調べて本当にすべて取得する権利を捨ててしまって問題ないかを確認する。 - 家庭裁判所で相続放棄の申立
必要書類を一式取り揃えて家庭裁判所に提出する。郵送でも可能。 - 照会書に回答して返送
書類の不備がなければ家庭裁判所から照会書が届く。記載されている質問に回答して返送をする。 - 相続放棄申述受理通知書を受け取る
家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届くため、これを受け取って手続が終了する。
借金の存在や債権者がわかっているのなら、相続放棄した旨を伝えておくと今後請求を受けることもなくなります。ただし証明を求められると思いますので、相続放棄申述受理通知書を受け取った後で「相続放棄申述受理証明書」の発行請求をして保管しておきましょう。この証明書を用いて債権者に相続放棄をしたことを示します。
相続人別の必要書類
相続放棄をするには申述書の作成が必須ですが、これに加えて戸籍謄本等を取得していかないといけません。被相続人に関する戸籍情報と自分自身の戸籍情報を伝える必要があるのですが、集めるべき書類の数は相続人としての“順位”によっても下表の通り異なります。
なお、配偶者は常に相続人となることができ、共同で第1順位~第3順位の順に相続人となることができる仕組みになっています。各順位に該当し得る人物は次の通りです。
- 第1順位:子どもやその代襲者である孫やひ孫など
- 第2順位:直系尊属(実父母や養父母、祖父母など)
- 第3順位:兄弟姉妹やその代襲者である甥や姪
被相続人との関係 | 必要書類 |
---|---|
配偶者 | 被相続人の「住民票の除票」または「戸籍の附票」 |
被相続人の死亡の記載のある戸籍・除籍謄本(戸籍全部事項証明書)、改製原戸籍謄本 | |
申述人の現在の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) ※3ヶ月以内のもの | |
第1順位相続人 | 被相続人の「住民票の除票」または「戸籍の附票」 |
被相続人の死亡の記載のある戸籍・除籍謄本(戸籍全部事項証明書)、改製原戸籍謄本 | |
申述人の現在の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) ※3ヶ月以内のもの | |
申述人が代襲相続人の場合は、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) | |
第2順位相続人 | 被相続人の「住民票の除票」または「戸籍の附票」 |
被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍・除籍謄本(戸籍全部事項証明書)、改製原戸籍謄本 | |
申述人の現在の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) ※3ヶ月以内のもの | |
第1順位相続人が死亡している場合は、同人の出生時から死亡時までのすべての戸籍・除籍謄本(戸籍全部事項証明書)、改製原戸籍謄本 | |
第3順位相続人 | 被相続人の「住民票の除票」または「戸籍の附票」 |
被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍・除籍謄本(戸籍全部事項証明書)、改製原戸籍謄本 | |
第1順位相続人が死亡している場合は、同人の出生時から死亡時までのすべての戸籍・除籍謄本(戸籍全部事項証明書)、改製原戸籍謄本 | |
被相続人の直系尊属で死亡している方がある場合は、その方の死亡の記載のある戸籍・除籍謄本(戸籍全部事項証明書)、改製原戸籍謄本 | |
申述人の現在の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) ※3ヶ月以内のもの | |
申述人が代襲相続人の場合は、本来の相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(戸籍全部事項証明書) |
参照:裁判所HP
留意事項について
もし「法定相続情報一覧図」の写しを提出するなら、図に記載のある方に関する戸籍謄本等は不要となります。司法書士等に依頼して作成してもらうと良いでしょう。その他必要書類に関しては以下の留意点があります。
《 必要書類に関する留意点 》
- 複数の相続人が申述するとき、戸籍謄本等が重複することもあるが、その場合は1通の準備で良い。
- 書類準備が間に合わないときは、申述書を提出した後に追加提出することも認められる。その場合は申述時に、追加予定の書類と提出予定時期を記載したメモの提出が必要。
- 申述人が未成年者なら、親権者の戸籍謄本等が必要。
- 申述人が成年被後見人等なら、成年後見登記事項証明書が必要。
- 相続開始を知った日が被相続人の死亡日から3ヶ月を超えるとき、その事実を裏付ける資料があるなら、同資料を提出する。
※税金等の滞納通知など
申述時に必要な費用
相続放棄では費用が必要です。
とはいえ必要なのは「800円分の収入印紙(申述人1人あたり)」と「数千円程度の連絡用郵便切手代(各家庭裁判所で金額は要確認)」くらいです。あとは戸籍謄本等の取得に発行手数料も必要となりますが、全体としても大きな金額ではありません。
司法書士に依頼するときは各司法書士事務所が定める料金が発生しますので、こちらも事前に確認しておきましょう。費用負担は増しますが安心して相続放棄の手続を進められるようになりますし、適切に相続放棄ができることで、債権者との揉め事も防ぎやすくなります。