法人の種類|それぞれの業態の特徴を解説
法人を設立することで、組織としての活動、ビジネスを展開することが可能になります。とはいえ法人の種類は豊富です。株式会社や合同会社、一般社団法人、NPO法人など、たくさんの法人があります。
事業内容によって選択肢は限られてきますし、それぞれ業態が異なりますので特徴を踏まえてどの法人として立ち上げるのかを考える必要があります。
この記事で法人それぞれの業態や特徴について解説していきますので、参考にしていただければと思います。
法人には多くの種類がある
比較的よく認知されている法人を以下にピックアップします。
●株式会社
●合同会社
●有限会社
●一般社団法人
●一般財団法人
●NPO法人
●宗教法人
●医療法人
他にも多数の法人があり、全国でさまざまな活動を行っています。ビジネス、その他組織としての活動を始めたいのであれば、まずは各法人の特徴を押さえておくことが大事です。
株式会社について
株式会社は、営利法人の代表であり、日本にある会社の代表とも呼べる存在です。
営利法人ですので、当該法人の構成員に対して、事業から得られた利益を分配することができます。
株式会社の場合は、「株主」が構成員です。株主は出資した範囲に限り責任を負います。
会社は広く出資を募ることができるため、より規模の大きな活動を始めやすいという特徴を持ちます。構成員たる資格は株式を保有することで得ることができるのですが、この株式には流動性があるのも特徴の1つです。原則として自由に売買することができ、他の人物に譲渡ができますので、構成員も移り変わることが想定されています。
上場することで、より取引がしやすくなり、全国不特定多数の投資家からの出資を募ることもできるようになります。これは株式会社の大きな特徴です。
とはいえ上場している株式会社はごく一握りです。
ほとんど株式会社は中小企業であり、株式に流動性はありません。定款によりその流動性に制限をかけ、外部の者が参入しないようにしている例が多いのです。
合同会社について
合同会社は「LLC」と呼ばれることもある法人です。
2006年の会社法改正により登場した比較的新しい法人でもあります。
そのため株式会社に比べると知名度は劣りますが、比較的設立件数は多い法人でもあります。
営利法人である点、法人の構成員である社員(従業員の事ではありません。以下同じです。)が有限責任である点など、株式会社と共通する特徴も多いです。株式会社でできる事業と合同会社でできる事業内容にもほとんど差異はありません。
しかし、設立時のコスト、設立後のランニングコストなどは合同会社の方が低いです。また、株式会社のように多数の社員が事業活動に携わることはなく、社員同士の結びつきが強いです。その結果、意志決定が迅速に行いやすいという特徴も持ちます。
小規模な会社を立ち上げる場合には合同会社が選択されることが多いのですが、合同会社だと規模が小さな事業しかできない、ということではありません。実際、「Google」や「Amazon」といった超大手の企業も合同会社として活動しています。
「知名度が低く社会的な信用度で株式会社に劣る」という説明がなされることも多いですが、こうした著名な企業が合同会社となる例もあることから、その差は徐々に埋まりつつあるといえるでしょう。
合資会社・合名会社との違い
合同会社と同じ営利法人、持分会社として、「合資会社」と「合名会社」が挙げられます。
いずれも合同会社と近い性質を持ち、社員同士の結びつきが株式会社に比べて強いという特徴を持っています。設立や運営のコストが低いこと、小規模な組織に向いているなどの特色があります。
一方で、「社員の責任の範囲」には大きな違いがあります。
合資会社は“無限責任社員と有限責任社員から構成される法人”です。
合名会社は“無限責任社員のみで構成される法人”です。
つまり、無限責任を負う社員がいるかどうか、という点に違いがあります。
一般社団法人について
一般社団法人は、非営利法人に分類されます。
つまり、法人の構成員に対する利益分配は目的としていません。
利益分配とは、例えば、株式会社における株主への配当のようなもので、「利益を出す活動ができない」という意味ではありませんので留意しましょう。
一般社団法人は活動内容に制限がありません。営利を目的としない、すなわち社員への利益分配をしない、非営利法人としての体裁を守っていれば、収益を上げることはできますし、当該法人内部の共益を目的としてビジネスを行うことも可能です。
公益性のある事業でなくても良いですし、従業員を雇い、給料を支払い、役員に対する報酬や賞与を出すことにも問題はありません。
公益社団法人との違い
一般社団法人は、株式会社を設立するときのように、要件を整えて登記をすれば設立できます。
しかし「公益社団法人」は、都道府県あるいは内閣府に対して公益認定申請を行い、認定を受けなければ設立することができません。
そしてその前提として、一般社団法人として法人が成立していないといけません。
公益社団法人になることで、税制優遇が受けられるようになります。一方で監督官庁の監督下に入るため、法人運営をより厳格に行わないといけません。
公益社団法人としての立場を維持するには認定基準をクリアした状態を維持しないといけませんし、優遇がある反面規制を強く受ける法人です。
一般財団法人について
一般財団法人は、財産の集まりを基礎とする法人です。人の集まりを基礎とする一般社団法人とはこの点で大きな違いがあります。
一般財団法人を設立するときは一定額以上の財産の拠出が求められます。0円で設立することはその性質上認められていません。
なお、非営利法人である点、法人の公益性や活動内容の制限がないことなどは、一般社団法人とも共通しています。
公益財団法人との違い
一般社団法人に対する公益社団法人の関係のように、一般財団法人にも「公益財団法人」があります。
一般財団法人に公益性を持たせ、所定の手続に従って認定を受けることにより、公益財団法人となることができます。
規制が強くなる一方、税金についての優遇が受けられるようになります。
NPO法人について
NPO法人も、一般社団法人や一般財団法人と同じ、非営利法人に分類される法人です。
しかしもっとも大きな違いとして“活動内容の制限”が挙げられます。
そもそもNPO法人とは「特定非営利活動法人」とも呼ばれ、社会貢献を行うことを主目的とする、特定の活動を行う法人を指しています。
具体的には、次のような分野に限られます。
●保険や医療、福祉
●社会教育
●まちづくり
●観光
●学術や文化、芸術、スポーツ
●環境
●災害救援
●国際協力
●人権、平和
全部で20種類ある分野のいずれかに該当しないといけません。
宗教法人について
教義を広めること、当該宗教における儀式行事を行うこと、信者を教化育成すること、などを主目的とする法人が宗教法人です。
都道府県知事もしくは文部科学大臣の認証により法人格を得ている必要があります。この認証を得ていない場合は、宗教法人ではなく単なる「宗教団体」としての立場にとどまります。
日本では神道系と仏教系の宗教法人が多く、令和3年12月31日時点における法人数は次の通りに示すことができます。
●神道系:84,231
●仏教系:76,455
●キリスト教系:4,511
●諸教:13,602
(都道府県知事所轄における宗教法人数)
参照:文化庁
医療法人について
医療法人は、病院や診療所、介護老人保健施設、護医療院を開設することを目的とする法人のことです。
医療法人も設立をするのに都道府県への認可申請が必要とされます。煩雑な手続を要し、設立手続に着手してから実際に設立されるまでに半年以上かかることも珍しくありません。
単に医療行為を行う場合は法人ではなく個人の医院を開設することもできますが、法人とすることで規模を大きくしやすくなります。そのため個人医院レベルでは難しい活動も実施しやすくなります。
また、法人となることで代表の入れ替わりにも対応しやすくなります。
法人の選択、設立手続は専門家に相談
特定の活動を目的とする法人、営利性を持つ法人、認可申請を要する法人などがあります。
設立する法人によりできることの幅や組織運営に対する規制の厳しさ、税制上の措置などにも違いがあります。
そのため「○○の事業を始めたいが、どの法人として設立すべきかわからない」「どうやって設立をするのか知りたい」という方は、会社設立に強い専門家に相談することをおすすめします。