商業登記とは?手続方法や必要書類、費用について
事業を営んでいる方であれば「商業登記とは何か」ということについて理解を持っていなければなりません。ビジネスの基礎にある概念で、法的な問題における重要な存在です。そこでこの記事では商業登記とは何かを解説し、実務上のポイントとなるその手続に関しても概要を説明していきます。
商業登記とは
「商業登記」とは、株式会社や合同会社などの「会社」に関する名称や所在地などの情報を公示するための制度です。
その他会社の目的や役員に関する情報、資本金額なども法律上公示することが求められており、会社を設立する際には必要事項を商業登記簿に記載しなければなりません。会社が法人として成立するにはこの登記が必要で、この手続を経ることで法人格を得ることができるのです。
商業登記と似たものに「法人登記」というものもあります。株式会社なども法人であることに変わりはないのですが、ここでいう法人は特に一般社団法人や一般財産法人、社会福祉法人、NPO法人などを指しています。記載される情報や登記の趣旨に大きな違いはなく、法人登記でも組織の名称や所在地、役員等の基本情報が記載されます。
また商業登記を「会社登記」と呼ぶ場合もありますが、同じ概念と捉えて良いです。
商業登記後は誰でも情報を閲覧できる
登記は設立のためだけの手続というわけではなく、取引の安全性を確保するために設けられた制度です。そこで登記された情報に関しては法務局で管理され、これから取引関係に入ろうとする者などは誰でも請求をすることで閲覧ができます。
具体的には「登記記載事項証明書(登記簿謄本)」の閲覧および取得をすることになります。取得するには、法務局の窓口で申請する方法と、Web上で申請をして郵送で受け取る方法とがあります。
申請先はどこの法務局でも良く、登記手続をした法務局とは別の市町村、別の都道府県を管轄する法務局でもかまいません。
手数料は窓口であってもオンライン申請であっても数百円程度で済みます。
商業登記の手続方法
商業登記の閲覧などではなく、登録・更新といった手続をする場合には、「窓口申請」「オンライン申請」「郵送申請」の3パターンから選ぶことができます。
また閲覧したい場合と違ってこのときの手続は会社の本店を管轄とする法務局に対してしなければいけません。
オンライン申請
オンライン申請をするには、法務省が提供している専用ソフトを使う必要があります。
申請用のソフトをダウンロードするとともに電子署名が可能な環境も整えなくてはなりません。オンライン申請でも一定の手間はかかりますが、一度できるようにしておけば今後法務局に出向くことなくスムーズに申請ができるため環境整備を進めておくと良いでしょう。
窓口申請
窓口申請をするには、直接管轄の法務局に出向いて、登記申請書類を提出しなければなりません。
直接窓口に行くことになり時間や手間がかかってしまうのはデメリットと言えます通常平日の日中しか開庁していませんので、登記申請のために時間を確保しなければなりません。
他方、法務局の相談窓口が利用できるのはメリットと言えます。申請書の書き方、登記に関する疑問などを質問することができますので、初めて申請をする場合や何か聞きたいことがある場合には利用をしてみると良いでしょう。
郵送申請
郵送申請をする場合、直接法務局に行く必要はありませんが、レターパックなど、郵送のための準備物を備える必要はあります。
レターパックがあるのなら簡単に手続ができますが、審査は書類が到着してからになりますので手続完了までにやや時間を要するという難点があります。また書類の不備があってもそのことに気づくのが遅くなってしまいます。
商業登記に必要な書類
商業登記をする場合、「登記申請書」に加え、登記の目的に合わせて以下の書類を準備しなくてはなりません。
- 定款:
会社設立で必要。会社の基本原則となる規定をまとめた書面 - 株主総会・取締役会の議事録:
株主総会や取締役会で決議した事項を登記するのに必要。議事録は決議内容を証する書面として活用される。取締役会が設置されていないときは、各取締役の同意書面で代替 - 就任を証明する書面:
取締役などの役員選任を登記するときに必要。選ばれた者が、就任につき承諾したことを証する書面。
登記にかかる費用
登記申請をするには、登記の内容別に金額が定められたと「登録免許税」を納めなければなりません。
よくある登記申請の例と登録免許税の額を以下に示します。
株式会社の設立 | 資本金額の0.7%(最低額15万円) |
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合同会社の設立 | 資本金額の0.7%(最低額6万円) |
株式会社・合同会社の資本金額増加 | 増加した資本金額の0.7%(最低額3万円) |
支店の設置 | 1ヶ所につき6万円 |
本店・支店の移転 | 1ヶ所につき3万円 |
取締役等に関する変更 | 1件につき3万円(資本金額1億円以下なら1万円) |
登記事項の変更・消滅 | 1件につき3万円 |
また商業登記には個人がするものも含まれます。
そこで個人の場合には、商号の登記に1件3万円、支配人の登記に1件3万円、商号の廃止や変更等に1件6,000円が発生します。
申請書にこの登録免許税分の印紙を貼付することで支払います。
登記を行うべき期間(登記期間)について
会社の登記については、原則、登記事由が生じてから一定期間内に登記をすべき旨定められています。本店所在地においては2週間以内に、支店の所在地においては3週間以内に手続を済ませるよう留意しましょう。
また、「登記の事由が発生したとき」の解釈にも注意が必要です。
例えば新しく選任された取締役に関する登記をする場合、起算日は「取締役選任の決議をした株主総会の期日」ではなく「取締役が就任を承諾した日」となります。当該取締役がその場で承諾をしたなどの事情があれば株主総会の期日と一致することはありますが、常に同じになるわけではありません。
仮に登記期間を過ぎてしまったとしてもそれ以降の申請が却下されるわけではありません。ただ、100万円以下の過料に処される可能性があります。
商業登記は自社の単なる記録として行うものではなく、取引の安全を目的としていますし、変更などの事由が生じたときにはきちんと手続を行うようにしましょう。