商業登記簿謄本の取得方法 ~手続や手数料、取得が必要な場面とは~
「登記簿謄本」という用語を聞いたことはあっても、会社の経営に携わる方でなければあまり馴染みはないものかもしれません。そのため「登記簿謄本を自分で取得したことがない」「取得方法を知らない」という方も多いのではないでしょうか。
ここでは初めて商業登記簿謄本を取得する方向けに、登記簿謄本を取得する3つの方法や取得にかかる手数料などを紹介していきます。
※登記簿謄本は、「登記事項証明書」とも呼ばれます。また、実物の書面の名称は「履歴事項全部証明書」となっており紛らわしいのですが、全て同じものを指していると考えていただいて構いません。実務では、昔ながらの「登記簿謄本」という呼び方がされることが多いようです。
登記簿謄本の取得方法
登記簿謄本を取得するには、次の3通りがあります。
① 法務局の窓口で申請する
② 郵送で申請する
③ オンラインで申請する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法務局の窓口で申請する
最も一般的な取得方法といえるのが、「法務局の窓口に出向いて申請を行い取得する方法」です。
取得したい法人の管轄の法務局でなくても取得は可能です。
自宅や会社から近くの法務局を以下の法務局所在地一覧を利用し確認してみると良いでしょう。
法務局の窓口が開いている時間は、基本的に平日の8時30分から17時15分までです。土曜・日曜・祝日は休館しているため注意が必要です。平日の上記の時間で法務局へ出向くことが難しい場合には、後述する別の方法で取得することも検討しましょう。
法務局で登記簿謄本を取得する具体的な手順として、まず、法務局へ到着したら証明書発行窓口に向かい、交付申請書を記入します。ここには住所や氏名、取得したい法人の名称、会社法人番号、請求部数などを記入し、「履歴事項証明書」と記載のある箇所にチェックを入れます。
次に取得にかかる手数料分の収入印紙を購入し、申請書の収入印紙欄に貼り付けます。
そしてそれを窓口へ提出すると交付を受けることができます。
また、法務局の中には「証明書発行請求機」を設置しているところもあります。これを利用すると申請書を記入する必要がなく手間がかからないため、設置されている場合には活用してみてください。
このように窓口申請した場合には、数分後に取得ができます。
郵送申請やオンライン申請だと申請と同時に取得することができません。そのため、取得を急いでいる場合や時間に余裕がない場合に選ぶべき方法ともいえるでしょう。
また、申請書の記入方法などがわからないときでも窓口の職員に直接質問できます。この点も窓口申請の良いところです。初めて取得する方や、郵送申請・オンライン申請に自信がない場合にはこの方法を選択すると良いでしょう。
郵送で申請する
申請を郵送で行い、登記簿謄本を取得する方法があります。法務局が自宅や会社の近くにない場合や法務局の開いている時間に出向くことが難しい場合に検討することになるでしょう。
この方法で申請する場合、次のものを同封して法務局へ郵送します。
- 交付申請書
- 収入印紙
- 切手を貼り付けた返信用封筒
交付申請書の様式は、こちらのページからダウンロードが可能です。
〈法務局 登記事項証明書(商業・法人登記)の交付請求書の様式〉
必要書類等を最寄りの法務局へ郵送すると、数日後に返信用封筒に記載した住所に請求した謄本が郵送で届きます。法務局へ行く必要がなく便利ですが、少し時間がかかる点には注意が必要です。早ければ3日程度で届くこともありますが、1週間程度かかるケースもあります。そのため時間に余裕がない場合には窓口申請の方が適しています。
オンラインで申請する
登記簿謄本を取得する方法としてもう1つ、オンラインで申請して取得する方法もあります。申請にはインターネットを使うですが、交付の方法は2通りから選べます。「窓口で受け取る」または「郵送で受け取る」の2通りから選択できます。
申請する際は、法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用します。
申請者情報の登録を行う必要があるものの比較的簡単に申請手続きができるため、普段からインターネットを利用している方であればスムーズに進められるでしょう。
手数料は、インターネットバンキング、もしくはペイジーなどで納付します。
郵送申請同様、交付までに数日かかることがネックではありますが、急いでないときや頻繁に取得する方には向いています。また、次項で説明するように手数料が安くすむため、なるべく費用を抑えたいという方にも適しています。
取得にかかる手数料
商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)1通の取得にかかる手数料を下にまとめました。
| 窓口交付 | 郵送交付 |
窓口申請 | 600円 | 非対応 |
郵送申請 | 非対応 | 600円 |
オンライン申請 | 480円 | 500円 |
申請方法および交付方法によって金額及び納付方法が異なります。間違いのないよう、窓口申請及び郵送申請の場合は収入印紙を購入し、オンライン申請の場合はインターネットバンキングやペイジーなどで納付しましょう。
商業登記簿謄本が必要になる場面
商業登記簿謄本が必要になる場面とはどんなときでしょうか。自社の謄本・他社の謄本の二つに分けて考えてみます。
自社の登記簿謄本の取得
自分が属する会社の登記簿謄本を取得するときの例として、次の場面が考えられます。
- 銀行で口座の開設をするとき
- 銀行からお金を借りるとき
- 国や自治体の補助金・助成金を申請するとき
- 許可申請・認可申請をするとき
- 登記を変更するとき
以上が登記簿謄本の取得が必要になる場面の例ですが、要は“会社の信用性が求められるとき”に必要になるといえます。
口座開設や融資、補助金・助成金申請、許認可申請の際には、銀行や国・地方自治体は会社の正確な情報を把握するために登記簿謄本の提出を求めます。そして、申請内容と登記情報に相違がないかを確認します。
また、会社の登記情報に変更があったときには登記の変更を行います。
例えば、役員が代わったり資本金の金額が増えたりしたときです。このようなときには事前に謄本を取得して変更する箇所を確認し、他にも変更になる箇所がないかをなどを確認する必要があります。
他社の登記簿謄本の取得
登記簿謄本は、自社のものを取得することはもちろん、その会社に所属していない人でも誰でも取得することが可能です。商業登記は、取引の安全性と円滑性を目的としたものだからです。
所属していない他社の謄本について取得する機会の例としては、次の場面が挙げられます。
- 会社の情報が知りたいとき
- 新たな取引先と取引を始めるとき
- 取引先と重要度の高い契約を結ぶとき
このように、会社の情報を正確に知りたいときに取得します。
存在する会社であるか、企業の規模や事業内容、資本金の金額などを調べることができます。
大きな企業だとホームページがあることが多く、会社の詳細な情報や経営者について事業内容などが確認できますが、小さな企業の場合はホームページを作っていないことも多く、確認する手立てがないこともあります。このようなときでも、謄本を取得すれば確認することが可能です。